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仙台家庭裁判所 昭和42年(少イ)5号 判決

被告人 有限会社共溶工業

右代表者取締役 青木君雄

被告人 荒井庄一

被告人 杉山林太郎

被告人 杉崎万次

主文

被告有限会社共溶工業を罰金四万円に

被告人荒井庄一を罰金二万円に

被告人杉山林太郎、同杉崎万次を各罰金一万円に

それぞれ処する。

被告人荒井庄一、同杉山林太郎、同杉崎万次において右各罰金を完納することができないときは金千円を一日に換算した期間当該被告人を労役場に留置する。

被告有限会社共溶工業、被告人荒井庄一、同杉山林太郎、同杉山万次に対する各公訴事実中年少労働者○原○市、同光○勝、同○又○雄を昭和四一年一二月二五日より同月三一日までの一週間に、および同○原○市、同光○勝、同○崎○一を昭和四二年一月一日より同月七日までの一週間にそれぞれ時間外労働させたとの点については無罪

理由

(事実)

被告有限会社共溶工業は、塩逢市北浜四丁目一四番一号に本店および作業場を有し、船舶溶接工業並びに船舶用内燃機関各種製作および修理を営む事業主であり、被告人荒井庄一は、右作業場の現場総括責任者で電気溶接の責任者をも兼ねているもの、被告人杉山林太郎は鉄工の、被告人杉崎万次は機械仕上の各責任者で、右被告人三名はいずれも同作業場において使用する所属労働者の就労につき指揮監督する等労働者に関する事項について事業主のために行為する使用者であるが、右被告人らは右会社のため法定の除外事由がないのは、同作業場において、

第一、被告人荒井は、杉山林太郎外一名と共謀のうえ、別表記載のとおり昭和四一年九月一八日から同四二年六月一〇日までの三八週間にわたり当時満一八歳に満たない年少労働者○原○市外六名に対し週四八時間のわく内で一日の労働時間を四時間以内に短縮することもなく、一人一日の法定労働時間八時間を超えて最高五時間ないし最低二二分づつの電気溶接等の作業に従事させ時間外労働をさせ

第二、被告人杉山は、荒井庄一と共謀のうえ、別表記載のとおり同四一年九月一八日から同四二年六月一〇日までの三八週間にわたり前同様の年少労働者○又○雄および○又○一の両名に対し、前同様の時間を超えて最高一時間三〇分ないし最低四九分づつ鉄工の作業に従事させ時間外労働をさせ

第三、被告人杉崎は、荒井庄一と共謀のうえ、別表記載のとおり同四一年九月一八日から同四二年六月一〇日までの三八週間にわたり前同様の年少労働者○崎○一および○田○男の両名に対し、前同様の時間を超え最高五時間ないし最低二二分づつ機械仕上げの作業に従事させ時間外労働をさせ

たものである。

(証拠)(編省略)

(適条)

被告人荒井、同杉山、同杉崎の判示各所為はいずれも労働基準法第六〇条第三項、第一一九条第一号、刑法第六〇条に該当するが、右犯罪は年少労働者各個人別に各週毎に一罪が成立すると解されるので、各被告人とも右各罪につき所定刑中いずれも罰金刑を選択し、以上は刑法第四五条前段の併合罪であるから同法第四八条第二項に従い各被告人毎に右各罪につき定められた罰金の合算額の範囲内で被告人荒井を罰金二万円に、同杉山および同杉崎を各罰金一万円にそれぞれ処し、同被告人らにおいて右各罰金を完納することができないときは刑法第一八条に則り金千円を一日に換算した期間当該被告人を労役場に留置する。

被告会社については労働基準法第一二一条第一項により、その従業者である右各被告人らの所為につき事業主として各本条に定められた罰金刑を科せられることとなるので労働基準法第六〇条第三項、第一一九条第一号、刑法第四五条前段第四八条第二項を適用して各罪につき定めた罰金の合算額以下において罰金四万円に処する。

(一部無罪について)

本件公訴事実中、被告人荒井が杉山外一名と共謀して昭和四一年一二月二五日より同月三一日までの一週間に年少労働者○原○市、同光○勝、同○又○雄の三名を、更に同四二年一月一日より同月七日までの一週間に同○原○市、同光○勝、同○崎○一の三名をそれぞれ時間外労働させ、被告人杉山が荒井と共謀して右○又○雄を右期間内に、被告人杉崎が荒井と共謀して右○崎○一を右期間内に各時間外労働させたから、各被告人と共に被告会社も責を負うべきであるとの点を検討すると、本件各証拠を綜合すれば右○原○市、光○勝が昭和四一年一二月二五日から同月三一日までの一週間内に各一時間半ずつ二回宛、同四二年一月一日より同月七日までの一週間内に各一時間半ずつ一回宛○又○雄が同四一年一二月二五日から同月三一日までの一週間に一時間半一回、○崎○一が四二年一月一日より同月七日までの一週間に一時間半一回、三〇分一回の、それぞれ時間外労働に従事した事実が認められる。しかし被告会社は就業規則(昭和四二年押第一三三号の一)第三章第八条に年末年始の休日として一二月三一日より一月三日までと、週一日の休日の他に定めており、昭和四一年末より同四二年始にかけて実際に右休日は与えられているから、右昭和四一年末の一週間および同四二年始の一週間は共に休日が週一日以上(二日および三日)となつていることも証拠上明らかである。而して労働基準法第六〇条第三項の一日の労働時間を四時間以内に短縮するとは、単に短縮するだけでなく一日を全く操業しないこととしてもよいのであるから週休日の他にも休日を与えた場合はその休日と同週内の他の日に(一日に限る趣旨ではない)一〇時間を限度として、又一週間四八時間の制限内で時間外労働させることは許されるのであつて、このことは本件の如く年末年始の休日でも異ならないと解する。従つて前記年少労働者らを前記週間内に時間外労働させた点に関する限りいずれも許された範囲内であつて同法第六〇条第三項に牴触するものではないから無罪の言渡をする。

よつて主文のとおり判決する。

(裁判官 千葉庸子)

別表(編省略)

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